【理事長より歓迎のメッセージ】
新入職員の皆さん、入職おめでとうございます。社会医療法人同仁会理事長の田端です。皆さんのみみはらグループへの入職を心から歓迎いたします。
みみはらグループは、無差別・平等の医療・介護・福祉・地域活動を総合的に提供し、安心して住み続けられるまちづくりを行う事業体として、堺から高石地域において「なくてはならない」役割を果たしています。1950年の耳原実費診療所から始まったこの無差別・平等の事業は、今年で74年を迎えました。
私たちは、この長い歴史の中で、地域の人々と健康友の会みみはらに支えられ続けてきたことを、決して忘れてはなりません。「医者に診てもらうときは、死ぬ時だけ」と言う状況の中で、地域の人々が百円ずつ出し合って、民家の2階を借りて、耳原実費診療所が始まりました。その時から、私たちの「無差別・平等」と言う理念が始まっています。その理念に共感していただいた、地域の多くの方々と健康友の会みみはらの力で、耳原総合病院を始め、みみはらグループの多くの事業所の建設が行われてきたのです。私たちは、「誰のために、何のために、だれとともに」事業を行ってゆくのか、常に振り返りながら活動しています。新入職員の皆さんにも、私たちの理念と、地域とともに歩んできた歴史を学んでいただき、みみはらグループが大切にしていることを胸に、働いてもらいたいです。
貧困と格差が地域にますます広がっています。私たちは、お金のあるなしで医療を受ける権利が妨げられないよう、創立以来、差額ベッド代を頂かずに病院運営をしています。また、同仁会では無料低額診療事業というのを行っています。これは、経済的理由により医療費の支払いが困難な方に対して、無料または低額の料金で医療を提供する制度で、患者さんから頂かなかった自己負担分は医療機関が負担します。
この無料低額診療を利用される方が非常に増えています。新規に無料低額診療を適用される方は、2018年には年間約50件程度であったのが、現在では約300件を超えています。また、無料低額診療を継続せざるを得ない方も年々増えています。「高齢の母親の年金をたよりに家族4人で暮らしているが、自分は病気で働けない、どうしたら良いか」、「以前から歯が痛かったが、保険料が支払えず無保険になった、でももう我慢が出来なくて受診した」、「子供を育てるためダブルワークをしていたが、身体を壊してどうしてよいかわかりません」、「夫婦ともに高齢で病気を多く抱えているが、障害を持ったこどもを自分たちが介護しており、もうどうしようもない」。お一人お一人の抱える状況には、本当に胸が詰まります。
同時に、このようなことが日常になってしまった、今の政治には大きな憤りを感じます。 私たちが「無差別・平等」の旗を高く掲げ、一人でも多くの方に、手遅れになる前に医療を受けていただく事業を行っていることは、とても大きな社会的意義があります。また、私たちは、「いのちと暮らしを守る政治」を求める活動を、医療・介護従事者の社会的責任として行っています。新入職員の皆さんは、これから各現場で、様々な困難を抱えた方々と接することになります。人権のアンテナを高く張り、地域の方たちが抱える困難に寄り添いながら、私たちが無差別・平等の事業を行っていることを誇りに思って、共に歩んでいただきたいです。
みみはらグループは、現在2030年に向けた中期事業計画を練り上げているところで、その計画を「みみはら2030年の樹」と称しています。この堺の地でも少子高齢化がますます進み、85歳以上の高齢者、とりわけ国民基礎年金しかない貧困女性高齢者がこれから増えてきます。そして高齢者の多死社会が到来しますが、その受け皿、すなわち尊厳を持って亡くなられる場所が、地域には圧倒的に不足しています。このような状況に立ち向かい、いかに人間としての尊厳を保てる医療と介護を提供するのか。無差別・平等の事業を展開する「みみはらグループ」が本領を発揮すべき時です。グループ全体が担う役割を現在よりもさらに広げ、それぞれの力量をより高める事業計画を、皆さんとともに創り上げたいと思います。
中期事業計画の成功には、共に事業を担っていただける、多くの職員の育成が不可欠です。この度、みみはらグループに入職していただいた新入職員の皆さんには、心から感謝したい。皆さんは、コロナの中、大変な思いをしながら医療従事者・介護従事者になる準備をされてこられ、実習など十分に出来なかった方も多いかと思います。みみはらグループの職員一同、皆さんを大切に迎え入れ、全力で成長をサポートします。わからないこと、不安なことなど、遠慮せずに指導者や先輩職員に聞いていただければと思います。
そして、皆さんには成長をあせらず、これからの医療人・介護人としての長い人生、ゆっくりと成長していただきたいと思います。患者さん・利用者さん・ご家族から大いに学んでください。同僚とも、ぜひ職種を超えて刺激しあっていただきたいと思います。
皆さんのこれからの成長を祈念して、私の歓迎のあいさつとさせていただきます。