医師として診療していると、「政府はこの国を一体どうしようと考えているのだろうか…」と感じる光景を日々目にします。外来診療では、「お金が無くて医療にかかれない」と言う方が多くいらっしゃいます。非正規の不安定就労、少ない年金、障害を抱えて働くことが出来ないご家族の扶養…。様々な問題を抱えておられ、「確かにこれでは医療費にまでお金を回せないよなあ」と感じます。ですが医療を受けなければ、たちまち倒れてしまうような病状の方ばかりです。耳原鳳クリニックでは、そういう患者さんには無料低額診療制度を適用して通院を続けてもらっていますが、私たちのところに繋がっていない患者さんは、医療を受けずに症状を我慢されていると思います。政府は医療を受ける権利を国民に保障する義務について、どう考えているのでしょう。
私は訪問診療も担当していますが、お一人暮らしの高齢者やご高齢夫婦のお二人暮らしの家がほとんどです。病状が悪かったり、介護度が高かったり、認知症が高度であったりする方が多く、お一人暮らしや老々介護での生活は一見して困難であると感じるご家庭です。訪問診療で日々目にする光景は、「本当に苦労を重ねて生きておられるのだなあ」、「介護者がいない時間帯は、どのようにして生活を営んでいるのだろう?」、「周囲の献身的な支えにより何とか生活が成り立っている」と思わせるものです。憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」のためには、もっと支援の手が欲しいと感じます。
でも、これから日本はさらに高齢化社会が進むのです。もっと医療や介護にお金をかけて、医療従事者、介護従事者を増やすとともに、患者さんや介護利用者さんの金銭的負担が少なくなるようにしなければ、高齢者だけでなく地域の方々皆が悲惨な状況に陥ります。特に介護従事者の不足は非常に深刻です。介護報酬は介護保険制度が始まってからどんどん切り下げられ、介護従事者の平均給与は一般の平均に比べて数万円も低く、仕事の内容も大変なため介護従事者の成り手がありません。介護を必要とする方はますます増えるのに、介護自身を供給する人が圧倒的に足りない状況です。政府は日本の高齢化社会をどのように乗り切ろうと考えているのでしょう。
先日、日本の軍事費を2倍にし、年間5兆円から6兆円も増額する方針が閣議決定されました。医療や介護にはお金をかけないのに、軍事費は国会討議や国民的議論もなしに大盤振る舞いです。「国のあり方」を考えるのは私たち国民一人一人です。いのちと暮らしを守る政治を、私は実現してゆきたいです。