10月1日から、75歳以上高齢者のうち単身で年収200万円以上の方、複数世帯で合計320万円以上の方は、医療費の窓口負担が1割から2割になります。コロナ禍による収入減、2022年4月からの年金減額、諸物価高騰の状況の中、多くの国民の反対を無視しての実施です。日本全体で約370万人の方が、堺市では75歳以上の2割に当たる約2万4千人が対象になります。耳原鳳クリニックに通院される患者さんはほとんどが高齢者ですから、かなりの方がこの対象になると考えています。外来診療に限り、「配慮措置」で3年間は負担増を月3000円に抑えるとのことですが、現在月3000円以下の窓口負担の患者さんは(高血圧患者さんや、関節症患者さんが想定されています)、そのまま2倍負担になります。厚生労働省資料を見ますと、年額2万6千円の負担増、配慮措置終了後は3万4千円の負担増になると試算されています。厳しい暮らしをされている患者さんの姿を思い浮かべると、本当に辛いです。
これにより、医療費は年間1880億円削減出来るとのことです。ですが、現在政府は防衛費を年間5兆円も増額する方針をうちだしています。少し前の話になりますが、アベノマスクには543億円、東京オリンピックには1兆4238億円のお金がかけられました。また、「若い世代の負担軽減がねらい」と政府は説明してきましたが、実際の負担軽減は月額わずか30円程度です。お金の使い方がおかし過ぎると思います。患者さんから支払窓口での不安、不満が数多く出されると思います。「無差別・平等の医療と介護」を実績する医療機関として、患者さんの辛い思いを正面から受け止め、可能であれば無料低額診療などにつなげて行ければと思います。同時に、患者さんや地域の方々と共に、弱いものいじめの今の政治を変えてゆきたいです。
窓口負担が1割から2割になる基準の「年収200万円」と言いますと、月収にして17万円弱になります。当院では無料低額診療事業を行っています。生計困難な方に医療費の窓口負担を減免、無料にするのですが、私は所長として全ての申請書類に目を通し、許可決裁をしています。申請書類に記載されている月収の多くは15万円から16万円程度である印象を受けています。つまり今回の負担増で、金銭的理由により医療機関に受診できない方が増える可能性が高いという事です。こんなことはあってはならない事だと思います。
「高齢化がもっと進むのに、増えてゆく医療費をどうするんだ」と言う声があります。私は目の前で苦しむ患者さんの現状から出発したい。人間が人間らしく生きてゆく事を阻害する世の中は、私たち国民が目指すべきものなのでしょうか?財源と言うなら、もっとより良い税金徴収の仕方や使い方があるはずです。私たちに求められるのは、決してあきらめないことです。共に頑張ってゆきましょう。