池田前所長の後を引き継ぎ、耳原鳳クリニックの所長に就任する事になりました、田端志郎と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。10年間の長きにわたって池田前所長が続けてこられたこの「健康雑記帖」も、私がこれからも長く続けて参りたいと思います。
新型コロナウイルス感染症が蔓延しています。「3密」や「手洗い」、新型コロナウイルス感染症の危険性などについては様々な情報源で嫌というほど目にしておられると思いますので、私はあまり情報発信されていない「心のケア」について触れたいと思います。
新型コロナウイルス感染症を「第1の感染症」とすれば、第2の感染症(心理的感染症:不安や恐れ)、第3の感染症(社会的感染症:嫌悪・差別・偏見)が、日本全国に広がっています(出典:日本赤十字社)。新型コロナウイルスは目に見えず、予防法や治療法が確立していません。人間はわからないものを恐れる傾向があります。こうした不安や恐れは人から人へ伝わり、ニュースや他者の言動を見てさらに不安が高まるという悪循環が生じます。これが第2の感染症です。
そして恐怖心は人間の自己保存本能を刺激し、ウイルスに接触したとみなされる人を日常生活から遠ざけたり、嫌悪したり、差別的に扱ったりする現象が生じます。これが第3の感染症です。実際に私の同僚でも、「○○さん家は▲▲病院に勤務していて新型コロナウイルス感染症の診療をしているらしい。子供も感染しているかもしれないよ」と周囲から言われたり、喫茶店で食事をしたらそのあと消毒されたりしています。医療者・介護者は「他者のために役立ちたい」と、この職業を志しています。その役立ちたい相手から自分の頑張りを否定されれば、心は簡単に折れてしまいます。
皆さんにお願いです。地域、職業、民族、国籍などに関係なく、新型コロナウイルス感染症に影響を受けるすべての人に共感してください。彼らは何も悪いことをしていませんし、私たちのサポートと共感が必要です。必要なときに他者を助けることは、サポートを受ける人と助ける人の両方に利益をもたらすことができます。今こそ人間らしい共感と助け合いの心を発揮しましょう。新型コロナウイルス感染症の情報は、信頼できる情報源に絞り、不安や苦痛を感じないようにしましょう。そしてポジティブなイメージが増すような機会を見つけましょう。
医療者と介護者は、新型コロナウイルス感染症との闘いの最前線に立っています。皆さんと皆さんの愛する人々の命と安全を守る上で、皆さんに応援していただくことが彼らの最大の力になります。心を一つに合わせ、ともにこの歴史的な大厄災を乗り切ってゆきましょう。