この4年間は、コロナワクチン接種が中心となっていたため、一般的なワクチン接種が後回しになっていた様に思います。今日は、私が皆さんにお勧めしたい帯状疱疹ワクチン接種についてお話しします。
まず帯状疱疹と言う病気についてお話しします。よく患者さんからは「ヘルペスが出ました」と言われることが多い病気のことです。水痘帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうを起こすウイルスのこと)は一度感染すると、体内から排除されずに脊髄の神経節と言うところにずっと潜んでいます。年をとったり、免疫機能が落ちたりすると、潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが神経に沿って帯状に皮膚に出てきて小さな水疱を形成するのが帯状疱疹です。帯状疱疹になるとすごく痛いので、それだけでもイヤな病気ですが、やっかいなのは帯状疱疹後神経痛と言ってその後もかなり強い痛みがずっと続くことが多いのです(8~15%の患者さんに神経痛が残ります)。私は、この帯状疱疹後神経痛に苦しむ患者さん(特に御高齢の方)を数多く診てきました。あの苦しみを目にして、「自分は帯状疱疹にはなりたくない」と思う医療従事者は多いのです。また、帯状疱疹は眼の領域や耳の領域の皮膚にり患すると、眼球の炎症や顔面神経の炎症を起こして、それぞれ専門診療科での治療が必要になることがあります。いずれにせよ、かかりたくない病気です。
遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチンであるシングリックス(商品名)は、帯状疱疹の発症予防は50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%と高い有効性を認めました。帯状疱疹後神経痛の発症予防についても、50歳以上で100%、70歳以上で85.5%の減少率を認めました。シングリックスの有効性ついては追跡調査が行われていますが、ワクチン接種後少なくとも10年間は予防効果が持続することが確認されました。接種対象者は50歳以上の人または帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の人(免疫不全など)です。2ヶ月間あけて2回接種します。接種費用が高いのが難点で、医療機関により価格は異なりますが1回約2万円かかります。自治体によっては接種費用の助成を行なっている所もあり、こういう助成は本当に必要だと思います。副反応としては、接種部位の痛みが主なものですが3日ほどで消失します(アナフィラキシーという重篤な副反応も起こり得ますが、抗生剤、鎮痛剤、その他のワクチンなどほぼ全ての注射薬でも起こり得ます)。50オ以上の方であれば打っておきたいワクチンです(私も接種しました)。
帯状疱疹は約6.4%に再発が認められるため、帯状疱疹にかかったことがある方の再発予防としても有効です。小児への水痘ワクチンが定期接種化され、水痘ウイルスへの成人曝露が減ったために免疫再活性化が起こらず、帯状疱疹の発症が増加しています。当院でも帯状疱疹ワクチンの接種を行なっています。当院では1回の接種費用は1万9千700円、健康友の会みみはらの会員さんだと1万8千150円と少しお安くなります。是非積極的に帯状疱疹ワクチンの接種をご検討下さい。