私は高血圧、糖尿病、脂質異常症と言う生活習慣病「御三家」全てを持っており、現在5種類の薬を飲んでいます。「えー、先生やせてるのに」とよく言われます。私は、「生活習慣病」と言う呼び方は正確ではないと考えています。と言いますのも、この3つの疾患は、遺伝的要因が大きいからです。私の親族は、皆さん高血圧、糖尿病、脂質異常症です。中年を越えたらこうなるのは、私が生まれた時から分かっていた様なものです。また、社会的な要因も大きいです。ストレスの大きい仕事、短い休憩時間、不規則な食事時間など、生活習慣病には不利な条件が私には揃っています。
でも、放っておく訳には行きません。私の専門分野は心臓血管病です。生活習慣病が行き着く先は動脈硬化であり、脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全、下肢動脈閉塞など、大変な病気になってゆく事を誰よりも知っています。でも生活習慣(とりわけ食事)を変えるのは本当に難しい。
高血圧には塩分制限が不可欠。診察室で「麺類の汁は飲みほしたらダメですよ」といつも患者さんに言っています。では私自身はどうか?ラーメンは汁が美味しいんです。私がラーメンの汁を飲み干さないか、いつも妻にチェックされています。「ごちそうさまでした。美味しかった!汁はちゃんと残したよー」と言うと、「ほんの少ししか残ってないやん。志郎さんの職業は何なん?」と厳しいお言葉。ハイ、医者で高血圧が専門です、ごめんなさい。
糖尿病はやはりカロリー制限。甘いものがなぜ欲しくなるのか?それは甘いものを食べると脳内モルヒネが出て、脳が喜ぶからです。人間には血糖値を下げるホルモンは1つしかありません(インスリンです)が、血糖値を上げるホルモンはたくさんあります。脳のエネルギー源はブドウ糖ですので、血糖値が下がると人間の大きな脳は活動できません。人類が地球上に誕生して以来、血糖値を何とかして上げるように歩んできたその子孫が私たち現代人です。遺伝子レベルで甘いものを好むようにできているのです。この誘惑に打ち勝つことなどできるのか!そう思いながら、今日も「たけのこの里」や「きのこの山」の袋を開けてしまいます。日本には美味しいお菓子が多いのです。
脂質異常症ですが、断言します。「脂っこいものは美味しい!」と。「今日は鶏肉料理をするけど何がいいー?」と妻。私は100パーセント、「鶏カツがいいなあ」と答えます。夜になり、さて一緒にビールでも飲むかなと思って食卓に座ると、あれっ?蒸し鶏やん。やられました。でも私の中性脂肪の値は、医者の自分から見てもやばいのです。妻に感謝しながら、夕食に舌鼓を打ちます。
生活習慣病の仲間の皆さん。医者がみんな私のような体たらくではないと思いますが、少なくとも私は、毎日、毎食、自分の食欲をコントロールするのに四苦八苦しています。医者でもこうなのですから、食事療法をきちんとできている患者さんを私は本当に尊敬しています。私と同じように食事療法に苦労している仲間たちへ、共に頑張りましょう!