コロナ禍を経て、「ワクチン接種」への関心が以前に比べて高まっているように感じます。今回話題にする肺炎球菌ワクチンだけでなく、帯状疱疹ワクチンなどに関しても、診察室で患者さんから質問を受けることが多くなってきました。私はワクチンの対象疾患にかかわらず、患者さんには積極的にワクチン接種を勧めています。その疾患に罹患して重篤な経過をたどった方々を数多く見てきました。ワクチンで予防できるものなら予防するに越したことはない、そう思うのです。
肺炎球菌は成人の肺炎原因菌の中で一番多く、「莢膜」と言うものを細菌の周りにまとっているために、白血球やマクロファージに貪食されにくく、短時間で重症化しやすい性質を持っています。非常に怖いのは、肺炎球菌が血液中や髄液中に入り込んで引きおこす「侵襲性肺炎球菌感染症」と言う状態です。死亡率が高く、診断したら7日以内に保健所に届けなければならないような病気です。私は耳原総合病院勤務時代に集中治療室で働いていましたが、侵襲性肺炎球菌感染症の患者さんを担当しました。激烈な多臓器不全を引き起こされ、私も一生懸命頑張ったのですが救命できませんでした。「ワクチンを打って頂いていれば…」と強く思った記憶が残っています。
ワクチンの利点は接種された本人だけでなく、「集団免疫の向上」と言う点にもあります。多くの人が肺炎球菌ワクチンを接種することで、集団免疫が向上し、社会全体での感染症の広がりを防ぐことができます。これにより、免疫力が低下している方々やワクチン接種ができない方々を間接的に守ることができます。また「医療費の削減」と言う利点もあります。感染症の予防によって、医療機関への負担や医療費の削減が期待できます。ワクチン接種は、長期的に見て経済的にも有益です。
肺炎球菌ワクチンは、現在65歳の方を対象に「ニューモバックス」と言うワクチンが定期接種(公費負担)として使用されています。ですが堺市では2025年3月31日までは、65歳以上の高齢者は初回接種であれば誰でも公費負担で接種できますので、定期接種対象者の方は、ニューモバックスを接種することを強くお勧めします。このニューモバックスは、接種後に効果が減弱してゆきます。そのため、初回のニューモバックス接種後、5年以上経過して再びニューモバックスを接種するか(任意接種)、1年以上経過して「プレベナー20(任意接種)」もしくは「バクニュバンス(任意接種)」を接種する必要があります。またバクニュバンス接種者はその後1~4年以内にニューモバックス(任意接種)接種が推奨されていますが、前回のニューモバックス接種からは5年以上開けなければなりません。非常にややこしいですね。「どうしたら良いのだろう?」と思われましたら、耳原鳳クリニックで担当医や職員にご相談いただければと思います。
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