現在、日本の医療機関は深刻な経営困難に直面しています。四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)は、10月11日に財務省に対して「病院への緊急財政支援への要望」を提出しました。この要望書によると、2023年度の日本の病院全体の経常利益率はマイナス1.2%、2024年6月はマイナス7.9%と大きな赤字でした。病院経営の維持には少なくとも3~4%の経常利益率が必要ですから(これは他業種に比べると非常に低い経常利益率です)、現在は経営が全く維持できないレベルと言えます。今年の医療機関の倒産は、過去最高になることが予想されています。この要望書では経営悪化の原因を、新型コロナウイルス感染症の影響により患者数が減少したことに加え、急激な人件費の高騰や診療材料費の高騰が診療報酬で適切に評価されていないためとしています。日本医師会も、「医療機関が機能を維持できなければ、国民の健康と生命が脅かされる」と、早急な支援の必要性を訴えています。
もともと、日本の診療報酬制度はとても低く設定されており、入院医療では常に入院ベッドが患者さんで埋まっている状態でなければ利益が出ず、外来診療では「3分間診療」と揶揄されるように非常に多くの患者さんを短時間で診療しなければ利益が出ないものになっています。その低い診療報酬も、この間「医療費抑制政策」のもとで、どんどん切り下げられてきました。医療は医療従事者が患者さんに相対して行うものですから、非常に多くの医療従事者を必要とする業種です。ですが、患者さんが少なくなったからと言って医療従事者の数を減らすことはなかなかできません。必要な人員数が基準として決められていますし、夏や冬など体調を崩される方が増加する時期などを見込んで、それに対応できる医療従事者数を確保しておかなければなりません。医療機器購入費、水光熱費、食材費などの高騰も、病院経営には大きくマイナスに響きます。他業種の様に、高騰した分を患者さんが支払う医療費に価格転嫁できません。また全ての物品の購入時には当然消費税10%を業者に支払いますが、その消費税分を患者さんの自己負担に付け替えることはできません。
医療や福祉は「負担」として捉えられることが多いのですが、果たしてそうでしょうか?医療事業はまさしく「地産地消」の業種です。医療機関で働く人々はその近くに住み、医療機関を利用する患者さんもその近辺に住んでおられ、医療機関が購入する物品も地域の業者から買い求めています。病院や診療所を建設する場合にも地域の建設業者に頼むことが多いです。これから高齢化が益々進んでゆく中で、医療は「地域経済を支える存在」とも言えるのです。
これまで日本の医療は、医療従事者の献身的な努力により支えられてきました。ですが、医療従事者の過労とストレスは深刻であり、これに対する適切な報酬と労働環境の改善が必要です。全国の医療団体が主張しているように、病院経営安定化のための直接的な財政支援が不可欠です。