皆さんは、ご自身のカルテにどの様な内容が記載されているか、どの様な情報が格納されているのか、ご存知でしょうか?カルテは患者さんの財産です。カルテには、患者さんが病院や診療所で受診するたびに記録されてきた、長年の貴重な情報が詰まっています。これは単なる医療記録にとどまらず、患者さん自身の健康にとっても非常に重要な意味を持ちます。以下に、その理由を三つのポイントに分けて説明します。
第一に、カルテには患者さんが長年にわたって通院してきた病気の歴史が詳細に記載されています。この情報は、新たな病気の診断や既存の病気の管理において非常に有用です。例えば、新しい症状が現れた場合、その背景にある過去の病歴を参照することで、迅速かつ正確な診断を下すことが可能となります。また、過去の病歴を参照することで、患者さん自身もどのような健康問題に注意を払うべきかを理解しやすくなります。
第二に、カルテにはこれまで行われた様々な検査結果や薬剤の処方内容が詳細に記録されています。これにより、どのような異常が見つかったのか、まだ行われていない検査は何か、有効でなかった薬剤は何かが一目瞭然です。これらの情報は、今後の検査や治療の計画を立てる上で非常に重要です。例えば、過去にアレルギー反応を示した薬剤を避けることや、未実施の検査を追加することで、より正確な診断と効果的な治療が期待できます。
第三に、医師にとってもカルテの存在は欠かせません。長年にわたる患者さんのカルテ内容を全て頭に入れておくことは、どんなに優れた医師でも困難です。そのため、簡潔な病歴要約を作成しておくことが推奨されます。これは、他の医療従事者が患者さんの病歴を迅速に把握し、適切な治療を提供するためにも重要です。例えば、緊急時に別の医師が対応する際や、専門医への紹介時に、病歴要約があることでスムーズに情報を共有できます。私はだいたい、400名くらいの患者さんの主治医になっています。全ての患者さんのカルテに、病名とそれに対して投薬している薬剤をリスト化して記載しています。でもそれだけでは不十分です。「いつ頃からこんな症状が始まり、この時期に当院に受診された」、「どの時期にどの病院でこんな手術を受けた」、「この時にこんな事が起こったから薬剤を開始した」などの「大まかな診療の経過」をきちんと分かりやすくまとめておかないと、患者さんの病気の歴史を掴めません。私は全ての患者さんではありませんが、順番に「大まかな診療の経過」をカルテにまとめて行っています。これは中々大変な作業で、20年以上も前のデータから全て確認してゆく作業になります。何とか全ての患者さんの「大まかな診療の経過」をまとめ上げるつもりです。
以上のように、カルテは単なる医療記録ではなく、患者さんの健康を守るための重要な財産です。その重要性を認識し、適切に管理・活用することが求められます。患者さん自身も、自分のカルテの内容を理解し、必要に応じて医療従事者と共有することで、より良い医療を受けることができるでしょう。