4月1日から、新しい耳原鳳クリニックの建物で診療を開始します。全職員の頑張りと、建設に携わっていただいた方々、地域の皆さま方に支えられてここまで来ることができました。心より感謝申し上げます。新しい耳原鳳クリニックの特徴は、2階フロアに、訪問診療部、ケアプランセンター、訪問看護ステーション、ヘルパーステーションの4つの「訪問系事業所」をワンフロア配置することです。高齢化社会が進み、医療と介護の一体的提供がますます強く求められています。お互いが「顔の見える関係」にとどまらず「声も聞こえ、仕事ぶりも見える関係」となり、一人の患者さん、利用者さんにより良い医療と介護を提供できると思います。是非この特徴を生かして、地域に貢献してゆきたいと考えています。
「地域包括ケアシステム」と言う言葉を皆さんはご存じでしょうか。地域包括ケアシステムとは、高齢者が要介護状態になっても住み慣れた場所で自分らしい暮らしを最後までおくれるように、地域が一体となり支援体制を構築する仕組みのことです。要介護者が暮らし続けるには、医療が不可欠です。ですので「医療と介護の連携」がどうしても必要になるのですが、運営法人も異なる別々の事業所での情報共有にはどうしても隙間が生じてしまいます。これまで日本の医療制度を創り上げてきたことで有名な産業医科大学の松田晋哉教授は、この隙間を埋めるために、入院や入所機能を持ち、訪問診療、訪問看護、ケアプランセンターなどの訪問系事業所を一つの建物に配置した、地域包括ケアシステムのハブ機能を果たす「地域包括ケアステーション」の必要性を唱えておられます。
訪問診療部門と介護系事業所を一つの建物や部署に集め、一体化して運営する私たちのような取り組みは、現在全国で行われています。多くの場合、入院施設や入所施設も兼ね備えたものになっています。訪問診療を受けている患者さんは、肺炎、心不全、尿路感染症、股関節骨折、胸腰椎圧迫骨折などで容易に病院への入院や高齢者施設入所が必要になるからです。当院はクリニックですから入院施設を持ちませんが、すぐ隣に同じ法人の「介護老人保健施設みみはら」がありますし、近くにグループ法人であるひまわり会が運営する「サービス付き高齢者向け住宅ひまわりの家・鳳」「看護小規模多機能型居宅介護ひまわりの里・鳳」があります。さらに言えば、道路から当院に入る場所にグループ法人である泉州メディカが運営する「タンポポ薬局」もあり訪問診療患者さんの訪問薬剤管理を担ってくれています。また重症患者さんは当法人の拠点病院であり「断らない救急」を運営理念に持つ耳原総合病院に救急搬送することができ、適切な入院医療への橋渡しを行うことができます。4つの訪問系事業所をワンフロアに集約する当院の機能だけではなく、同じ法人、グループ法人の力も併せて、「地域包括ケアステーション」の機能を果たしてゆきたいです。もちろん、地域の医療と介護を私たちだけでカバーすることは、到底できません。これまで以上に、地域の医療機関、介護事業所とは、ICT機器なども活用しながら密な連携や情報交換を行い、共に地域への貢献を果たしてゆきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。