このコラムは、私が所長に就任した3年前から毎月書いているのですが、始めた頃は月の中旬には書き上げていました。今は月の終わりまでに何とか書き上げるのが精一杯になっています。前所長の池田医師が10年間毎月発行していたコラムです。引き継いだ私の代でつまずく訳にはいきません。来年からはまた中旬の〆切を目標に頑張りたいと思います。
さて、新型コロナウイルス感染症は現在第8波に入り、ピークはまだこれからなのですが、すでに猛威をふるっています。コロナ患者さんのための入院病床は逼迫し、医療機関でクラスターが発生しているために通常の入院受け入れも制限せざるを得ず、医療従事者も次々にコロナ感染してゆくために人手不足の状態で多数の発熱患者さんや救急患者さんに対応しています。これまでの感染の波で見られた「発熱難民」「救急難民」が発生しているのです。
患者さんからよく訊ねられます。「先生、こんな事いつまで続くんですか?」と。中国の武漢で新型コロナウイルス感染症が発生したのが2019年12月でした。あれから丸3年が過ぎたことになります。当初は「スペイン風邪は終息に3年かかったのだから、コロナも3年くらいはかかるよ」と言われました。ですが私は「確かにそうだろうが、できれば何とか3年以内に終息して欲しい」と願っていました。結局希望は叶わず、スペイン風邪よりも長い世界的パンデミックを、私達は経験することになってしまったのです。本当に歴史に残る大災害です。
死亡率自体はインフルエンザと同等かそれ以下になってきています。それはありがたいのですが、感染力が強いのが厄介です。医療機関には抵抗力の弱い方がたくさん集まります。医療機関で別の病気をもらってしまうことは、本来あってはならない事です。ですからいくら死亡率が低くなっても、医療機関でクラスターが発生しない様に、コロナ患者さんの隔離や一般患者さんの入院制限をしなくてはなりません。また医療従事者が感染したら、感染力がある間は仕事を休まなければなりません。これらの事は死亡率の非常に低いノロウイルスやインフルエンザウイルスでも同様でしたが、新型コロナウイルスの場合は感染力が10日間程度と長いことも、医療供給体制をさらに逼迫させる原因になっています。この「通常医療への影響」が、新型コロナウイルス感染症の大きな問題です。また、当院には多数の「コロナ後遺症」患者さんが受診されています。まだまだ新型コロナウイルスには分かっていないことが多いのです。
ではどうすれば感染力が低下してゆくのでしょうか?これには非常に多くの人が新型コロナウイルスに対する免疫力を持つことが必要になります。日本人のほぼ全員が1回は新型コロナウイルス感染症に罹患したり、オミクロン株コロナワクチンの接種率が非常に高くなったりしない限りは、この流行の波は続いてゆくことになるでしょう。万が一、オミクロン株以外の株が流行する事になれば、さらに同じ経過を繰り返して行かなければなりません。「ウィズコロナ」で考えてゆくことが、まだ必要なようです。