世界中で、異常気象が続いています。ヨーロッパなどを中心として「100年に1度」の干ばつで川が干上がり、普段は水没している遺跡が出てきたり、船が航行出来なくなったりしています。日本でも毎年のように「史上最大の雨や気温」との報道がなされ、水害や熱中症の被害が続いています。地球温暖化を止めてゆくことは、人類全体で取り組むべき、喫緊の課題です。
地球温暖化を進めている最も重要な要因は「二酸化炭素の排出」であることが明らかになっています。そして二酸化炭素排出の大きな原因は「石炭火力発電」です。日本は世界の国の中でも、特に石炭火力発電に固執しており、現在でも新たな火力発電所を建設しているほどです。これについては、日本政府に「再生可能エネルギーに転換せよ」と私たちが迫ってゆかなければなりません。それと同時に、全ての産業で二酸化炭素の排出を抑制する取り組みが必要です。
研究によれば、日本のカーボンフットプリント(原料調達から廃棄、リサイクルまでの、全体の二酸化炭素排出量換算)のうち、4.6%がヘルスケア産業に起因するもののようです。結構な率で、私はこれを知ってびっくりしました。たしかに、医療で使用する物品のほとんどは「ディスポーザブル」であり、1回使えば必ず捨てます。これまでの医師人生で、私はすさまじい量の医療物品を使用し、捨ててきました。毎回「もったいないなあ」と思いながら。再利用せずに捨てることは感染予防のために必要なことなのですが、果たしてこのままで良いのでしょうか?二酸化炭素の排出を少なくする材質はないのでしょうか。また再利用可能な物品はないのでしょうか。医療界が真剣に取り組むべき課題です。
また医療全体で言うと、「入院医療」はより多くの二酸化炭素排出を必要とします。多くの医療資源を使用するからです。入院を回避し、在宅医療や外来医療で検査や治療ができれば、二酸化炭素排出を少なく出来ます。入院せずに済むということは、患者さんにとってもよいことです。早期に異常を見つけ、適切な診断を行い、在宅医療を入院医療と同じようなレベルにまで向上させることが望まれます。不必要な検査、通院、投薬を少なくしてゆくことも大切です。特に投薬は「ポリファーマシー(多剤服用)問題」と言われ、社会問題化しています。多くの種類の薬剤を投薬されているために、副作用が起こったり、薬物同士の相互作用が起こったりするのです。皆さんが考えておられるよりも、「効果が明らかでない」薬剤というのは多いものです。また、高齢患者さんの多くは、たくさんの疾患を抱えておられますが、その一つ一つの疾患にすべて投薬を行っているとすさまじい量の薬剤量になってしまいます。「全体的に考えるとこの薬剤はなくてもよい」と判断できるものが意外と多いです。ですが、自己判断で薬を飲まないのはとても危険なことです。主治医と相談し、減らせる薬剤があれば減らしたほうがご自身の身体のためにも良いですし、それが地球温暖化の軽減にもつながります。
耳原鳳クリニックは、現在新しいクリニックへの現地建て替えを計画しています。二酸化炭素排出を少しでも削減できるような、ハードとソフトを併せ持ったクリニックにしてゆきたいです。