2月24日、ロシアはウクライナに対して侵略を開始しました。テレビやインターネットで流れる報道内容や映像を見て、私と同様に愕然とした方が多かったと思います。国が武力を用いて他国を支配しようとするなど、19世紀ではあるまいし、「歴史の針を巻き戻す」暴挙です。決して許すわけにはいきません。また、国による大規模殺人と大量破壊が公然と行われている状況に、違和感というか、ありえない感というか、これまでに経験したことのない感情を持ちました。殺人と破壊は明らかな犯罪です。国が行えば犯罪ではなくなるのでしょうか?「居ても立っても居られない」、そんな思いに駆られました。
今は世界中がコロナ対応に全精力を傾けています。また、気候危機に対して全世界が協力してCO2削減をしようと努力しています。その最中の軍事行動ということが、さらに気持ちを暗くさせます。国際社会はコロナ対応やCO2削減に割くべき労力を、ロシアの侵略を止めてウクライナを守ることに割かざるを得なくなりました。また、戦争により市民のコロナ感染防止が不十分になることは確実ですし、CO2は削減どころか排出が増えるでしょう。私たちは、毎日朝から晩まで、食事休憩もほとんど取らずに、コロナ患者さんの命と健康を守ろうと努力しています。でも日本の医療行政の貧弱さのために、上手くいかないことが本当に多いのです。患者さんのために心を奮い立たせて、さらに一歩前に進まなければと自らを叱咤激励する日々です。私たちが身を粉にして努力していることと、今回のロシアの侵略行為は全く相いれないことです。私たちの努力と存在意義を否定するものです。
プーチン大統領が核兵器の使用をほのめかし、国際社会を威嚇したことも許せません。核兵器禁止条約を作り上げてきた市民社会や国際社会を愚弄するものです。大国の一部の指導者による世界秩序ではなく、市民と国際社会が連帯して、人類がこれまで築き上げてきた基本的人権の考え方に基づいた世界を目指してゆく思いを、今回のことで新たにしました。
「今回のロシアの侵略から、日本も核兵器を持つべきだ」、「やはり軍隊を持たないと攻め込まれるぞ」、「憲法9条では平和を守れない」などと言った意見がインターネット上にあふれています。果たしてそうでしょうか?東南アジア諸国は1988年にベトナムと中国が南沙諸島で戦火を交えて以来、正規軍による大規模な武力衝突は起きていません。同時期にヨーロッパでは10以上の軍事紛争が起きているにもかかわらず。それは、東南アジア諸国がASEANで粘り強い外交努力と対話を繰り返し、軍事力による対抗ではなく、国連憲章と国際法を共通のルールとした平和共存を追求しているからです。半世紀近くのたゆまない努力が今日の到達を築いています。唯一の戦争被爆国で、憲法9条を持つ日本。第二次世界大戦におけるアジア諸国への侵略を反省し、東アジアを平和の地域としてゆく努力に貢献してゆくことこそが、日本を戦争から守る方法になるのだと思います。(この原稿は2月28日に書きました)