皆さんの多くは「新型コロナウイルスワクチンって打った方が良いのかな?安全なのかな?」と不安に思っておられるのではないでしょうか。私自身は医師として「早く自分の打つ番が来てほしい」と願っており、患者さんにも「打った方が良いと思いますよ」と勧めています。
私は救命救急分野に長らく従事してきました。「もう助からない…」誰もがそう思う患者さんの生命をこれまで多く救ってきました。その経験から言うと、新型コロナウイルス感染症のように人が亡くなる病気をあまり知りません。救急医療では人間の臓器を、中枢神経、心、肺、肝、腎、血液凝固の6つに分けて考え、そのうちいくつの臓器の働きが障害されているかで重症度を評価します。私の経験では3つ以下の臓器不全までならたいてい救命できていました(後遺症が残ることはありますが)。ましてや不全臓器が1つだけの場合は、その臓器の働きを代替する医療機器や薬剤が色々とありますから、集中治療で何とかなっていました。新型コロナウイルス感染症の病態は呼吸不全です。呼吸不全だけで死に至ると言う事は、非常にすさまじい呼吸不全ということです。そんな呼吸不全を経験するのは1年か2年に1人程度でした。それが新型コロナウイルス感染症では普通に発生するのです。私も、「もし自分が新型コロナウイルス感染症にかかってしまったらどうしよう・・・」と不安な気持ちを抱えながら、気合を入れて感染防護手順の一つ一つをしっかりと守り、発熱患者さんを診療しています。早くワクチン接種をしたい、偽らざる気持ちです。
新型コロナウイルスワクチンの効果が高いことにも期待しています。まず接種が始まる予定のファイザー社製ワクチンは2回の接種が必要ですが有効率は95%とされています。これは接種した人の95%が罹らないという意味ではなく、非接種群に比べて接種群の発症率のほうが95%少なかったという意味です(相対的なリスク低下)。最も怖い副反応はアナフィラキシーと言う強いアレルギー反応です。アナフィラキシーは、血圧が低下したり呼吸状態が悪くなったりして最悪の場合死に至る怖い状態ですが、アドレナリンを筋肉注射することにより状態の悪化を治療することが可能です。このアナフィラキシーの発生頻度が0.001%(10万人に1人)とされています。過去にアレルギー歴のある方は注意が必要です。接種部位の痛みや腫れなどの局所症状は70~80%と高頻度に起こります。38度以上の発熱も2回目接種時には10数%で生じるようです。
日本感染症学会から「ワクチンに関する提言(第1版)」が公表されていますが、「ワクチン接種を避けるべき人」など具体的な記載はされていません。今後、厚労省や各種学会から新たなガイドラインなどが発出され、問診上の注意点や、ワクチン接種時に注意すべき点などが明らかになるはずだと思います。信頼性の高い情報に接し、かかりつけ医とよく相談してワクチン接種を考えていただければと思います。