耳原総合病院では2015年の新病院建設直前から「ホスピタルアート」を導入してきました。一般の方にはホスピタルアートと言う言葉はなじみが薄いかもしれません。「病院に飾ってある絵画や彫刻類」と直感的にとらえられる方が多いかもしれませんが、それだけではなく写真、デザイン、物語、音楽、ダンス、オブジェ、パフォーマンス、イベントなどアートは幅広い分野にわたるものです。そしてそれらは「患者さんのため」にだけ行われるのではなく、ご家族、地域住民の方々、職員、芸術家すべてを力づける存在になります。実際に耳原総合病院で行われてきたホスピタルアートは非常に幅広い芸術領域に至っており、職員、患者さん、地域住民、芸術家がそれぞれ力を合わせて作り上げてきました。
耳原総合病院ではコロナ禍においてホスピタルアートが非常に大きな力を発揮してきました。ご家族面会が禁止される中、患者さんの心を少しでも癒そうと、病院内で患者さんからの音楽リクエストに応える「ひかりの子 ラジオ」を放送し、好評を得ました。また、患者さん向けの新型コロナウイルス感染症に関するパンフレット類のデザインは全てホスピタルアート部門が作成し、マンガを入れたり分かりやすい意匠にしたりして、自慢できる配布物になりました。職員向けには「クリア-スカイ-プロジェクト」と称して職員から投稿されたきれいな空の写真を病院の壁にたくさん掲示する取り組みが行われました。この取り組みはロシア大使館の目に留まり、ロシアの空の写真も掲示されることになりました。救急外来掲示の空の写真は救急隊員の癒しにもなっています。また「みみはらアマビエ」は職員フロアにあまびえの絵を掲示し、そこに職員の思いを付箋に書いて張り付ける取り組みでした。つらい思いをしている職員の胸の内を吐き出すとともに、お互いを励ますものとなりました。
もともとホスピタルアートは、医療機関と言う一種ネガティブな感情が渦巻く場所をポジティブなものに変えてゆく力を持っています。そしてコロナ禍においては、医療機関に必須の取り組みと言えるほど、職員や患者さんを力づける存在になりました。とりわけ、多大なストレスを生じている職員に対しては、ホスピタルアートをどんどん活用すべきだと考えています。耳原鳳クリニックでも、12月に「メリークリスマスパフォーマンス」を行いました(写真=トナカイが筆者)。耳原鳳クリニックは3~4年後に建て替えを計画しています。新しいクリニックではホスピタルアートを積極的に導入するとともに、今のクリニックででも、いろんな取り組みを地域の方々とともに行ってゆきたいと思います。