私が当院の所長になって4年が経とうとしています。私は経営母体法人の理事長を務めていますが、クリニックの所長と、約1500名の職員を有する法人の理事長を兼ねるのは、なかなか大変です。クリニックの所長は、医師として先頭に立って医療活動を行わなくてはなりません。クリニックの「顔」ですし、模範的な医師でなくては職員について来てもらえません。私は毎朝7時40分にクリニックに着き、診療の予習をします。検査結果に目を通し、時間をかけて治療方針をあらかじめ決めておきます。9時からは通常診療です。外来診療、訪問診療と一日中、数多くの患者さんを診察し、昼休みが5分くらいの時もあります。夜は書類記載です。その他の時間は全て会議です。クリニックを管理してゆくための会議、新クリニック建設のための会議、そして法人運営の会議です(会議も多い…)。
私は理事長ですから、法人運営にもっと頭を使い、多方面の情報を取り入れ、外に出かけて人脈作りをして行かなければなりません。法人幹部からは「もっと理事長の仕事をしてください」と苦言を頂いています。でも、私にとって、耳原鳳クリニックの所長である事こそが、理事長としての私を支えてくれていると実感することが多いのです。夜の7時のことです。書類を書くために患者さんのカルテを見ていると、血液検査の結果があまり良くなく、早めに対応した方が良いことに気付きました。翌日から私は出張で今対応しておかなければなりません。「この時間からどうしよう?」と思ったのですが、電話をかけてみると、まだ看護師が残っていました。「こんな時間に申し訳ない」と謝りながら対応をお願いすると、嫌な顔一つせず「良いですよ!」と言ってくれました。「出張、気を付けて行ってらっしゃい」の言葉を添えて。その時私はとても疲れていたのですが、本当に助かり、嬉しく、元気を貰えました。
私の予約患者数が多いために1人の患者さんにかける時間が短くなり、「こんなのでは患者さんに申し訳がないなあ」と言うと、「先生の診療は患者満足度が高いですよ」と、ある看護師さんから励まされました。「所長と理事長の兼務なんて本当に大変ですね」といつも気遣ってくれる職員もいます。所長にとって耳の痛い話をしてくれる職員もいます。これは大事なことです。「答えがあらかじめ判っていること」など、ほとんどない訳ですから、反対意見やリスクを把握しながらの意思決定ができるのはありがたいことです。
「現場の職員に、私は支えられている」と言う実感は、時に理事長の重責に押し潰されそうになる私を叱咤激励してくれます。理事長室にこもって幹部同士で仕事をするだけでは、耐えられなかったかも知れません。理事長とクリニック所長の兼務にはこれからも悩むと思うのですが、現場の職員に支えられていると言う事を決して忘れず、役割を果たして行きたいと思います。耳原鳳クリニックの職員に「ありがとう」。