2024.11.8 緒方 浩美
食事をすると、炭水化物はブドウ糖まで分解され小腸から吸収されます。寝ている間など、食事をしない時間が続くときには、主に肝臓によりブドウ糖が作られています。私たちの体は主にブドウ糖をエネルギーとして利用しており 食後だけでなく食べていないときも一定の濃さで血液中を流れています。血液のブドウ糖の濃さを血糖と呼んでいます。
からだをめぐる血糖は、インスリンという膵臓から出るホルモンとの共同作業で さまざまな細胞の中に取り込まれエネルギーとして利用されます。
糖尿病とはインスリンが十分に働かず、血糖をうまく細胞に取り込めなくなった結果、血液中に糖があふれている状態をさします。これには、2つの原因があります。
①インスリン分泌低下;膵臓で作るインスリン量が少ないため血糖が細胞に入り込めず血糖がさがりきらない。日本人はもともと欧米人の半分程度しかインスリンを作れない民族です。さらに遺伝的にインスリン生産が不足気味な人も多く、必要な量の6割以下になると糖尿病と解る場合が多いようです。
②インスリン抵抗性;インスリンの量はあっても効果を発揮できない状態。脂肪肝や運動不足、油っこい食事、加齢、ストレスによってインスリンの働きは鈍くなります。
血糖は上がっても、症状がほとんどないことが多いため、治療につながらない、続かない方が多いのが現実です。しかし血糖が高いまま何年も続くと血管の目詰まりが進みやすく、視力障害や腎障害、様々な神経障害といった”三大合併症”がおきやすいこと、さらに脳梗塞や心筋梗塞・狭心症、足壊疽また認知症・歯周病などもおきやすいことが知られています。
血糖があがりやすい人の95%以上はインスリン抵抗性やインスリン不足が組み合わさって何年もかけて発症する2型糖尿病です。新型コロナウイルス感染拡大後は外出控えで運動不足となり、血糖上昇につながっているかたが増えました。糖尿病と指摘されているかたにとって食事や運動の工夫は不可欠ですが、血糖を下げる力を応援するため薬の利用もふくめ 上手に過ごす方策を一緒に考えましょう。無理なダイエットは禁物です。しっかり3食食べて毎日こまめに動くこと。甘い飲み物、遅い時間に食べることだけは控えましょう。
緒方 浩美(おがた ひろみ)
専門医 日本内科学会総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医
所属学会 日本プライマリ・ケア連合学会
日本内科学会
在宅医療連合学会
日本糖尿病学会