第3回
「コロナ禍のもたらしたもの 2 」
2020年9月に耳原総合病院の病院長を退任して訪問診療を行いたいということで、この分野に飛び込みました。訪問診療は、これまでは総合病院での入院医療や外来医療しか知らなかった私には非常に新鮮なものでした。と同時に、高齢者の置かれている現状が病院内からだけでは見えてなかったことがよくわかりました。
訪問診療に従事し初めぐらいから「コロナ禍」が大きく深くなっていきました。第1波から第12波まで訪問診療を行いながら経験しました。第1-2波はウイルスの特性もよくわからず、ワクチンもなく、都会の真ん中でも無医村だなーという感想を持ちました。かかりつけ医に見てもらえない患者さんから往診依頼がたくさん来ました。軽症ならいいのですが、中等症以上なら入院が必要となります。法人内に総合病院があったので大いに助かりましたが、私たちのようにバックがなく訪問診療をされている先生方はさぞかし大変だっただろうと思います。
高齢者施設では長く面会制限が続きました。介護する人もコロナ感染症との戦いの中で、入居者さんへサービスする姿を本当に頭が下がる思いでした。この人たちがいなくなったらどうなるのだろうかと思いました。
いろいろな意見はあるでしょうが、一部基礎看護の部分をこの介護者さんたちが行っており、介護報酬の適正化を行わなければ、それこそ現役世代に大きな負担がかかります。そして、コロナ禍はこの介護問題を見えにくくした可能性はあります。いわゆる面会制限による、無意識のうちに起こる高齢者への無関心です。これが最も厳しいことだろうと思います。
第4回へ続きます。